ブッダの言葉 ( スッタ・ニパータ) 7

         ブッダの言葉 ( スッタ・ニパータ )  7

 
 
 
蛇の毒が身体のすみずみに広がるのを 薬で制するように、
怒りが起こったのを制する修行者は、この世とかの世とを共に捨て去る。
ーー 蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなものである。
 
内に怒ることなく、世の栄枯盛衰を超越した修行者は、この世とかの世
とを ともに捨て去る。 ーー 蛇が脱皮して旧い皮を捨て去るようなもの
である。
 
実に欲望は色とりどりで甘美であり、心に楽しく、種々のかたちで、
心を攪乱する。 欲望の対象にはこの患 ( うれ ) いのあることを見て、
犀 ( サイ ) の角 ( つの ) のように ただ独り歩め。
 
ふして見、とめどなく うろつくことなく、諸々の感官を防いで守り、心を
護り慎み、煩悩の流れ出ることなく、煩悩の火に焼かれることもなく、
犀の角のように ただ独り歩め。
 
慈しみと 平静と あわれみと 解脱と 喜びとを 時に応じて修め、世間
すべてに背 ( そむ ) くことなく、犀の角のように ただ独り歩め。
 
栄える人を識別することは易 ( やす ) く、破滅を識別することも易い。
理法を愛する人は栄え、理法を嫌う人は敗 ( やぶ ) れる。
 
おのが妻に満足せず、遊女に交わり、他人の妻に交わる、
ーー これは破滅への門である。
 
己は財豊かであるのに、年老いて衰えた母や父を養わない人、
ーー かれを賤しい人であると知れ。
 
生まれによって賤しい人となるのではない。 生まれによってバラモン
なるのではない。 行為によって賤しい人ともなり、行為によって
バラモンともなる。
 
究極の理想に通じた人が、この平安の境地に達して なすべきことは、
次のとおりである。 能力あり、直く、正しく、ことばやさしく、柔和で、
思い上がることのない者であらねばならぬ。
 
あたかも、母が己が独り子を命を賭けても護るように、そのように一切の
生きとし生けるものどもに対しても、無量の慈しみのこころを起こすべし。
 
愛欲の想いを離れ、一切の束縛を超え、歓楽による生存を 
滅ぼしつくした人 ーー かれは深海のうちに沈むことがない。
 
ひとは信仰によって激流を渡り、精励によって海を渡る。 
勤勉によって苦しみを超え、知恵によって全く清らかとなる。
 
あらゆる執著の場所を知りおわって、そのいずれをも欲することなく、
むさぼりを離れ、欲のない聖者は、作為によって求めることがない。
かれは 彼岸に達しているからである。
 
われら、ここに集まった諸々の生きものは、地上のものでも、空中のもの
でも、神々と 人間とのつかえる このように目ざめた人を礼拝しよう。
幸せであれ。
 
遠ざかり離れる味と 平安となる味とを味わって、法の喜びを味わって
いる人は、苦悩を離れ、悪を離れている。
 
父母につかえること、妻子を愛し護ること、仕事に秩序あり混乱せぬこと、
ーー これが こよなき幸せである。
 
修養と、清らかな行いと、聖なる真理を見ること、安らぎを体得すること、
ーー これが こよなき幸せである。
 
神霊よ、聞け。 それらの煩悩が いかなる原因にもとづいて起こるかを
知る人々は、煩悩を除き去る。 かれらは、渡りがたく、いまだかつて
渡った人のいない この激流を渡り、もはや再び生存を受ける事がない。
 
怠りは塵垢である。 怠りに従って塵垢がつもる。 つとめはげむことに
よって、また明知によって、自分にささった矢を抜け。
 
煩悩の汚れはすでに尽き、高慢を断ち、あらゆる むさぼりの路を超え、
みずから制し、安らぎに帰し、こころが安立しているならば、かれは
正しく世の中を遍歴するであろう。
 
貪欲を離れ、諸々の感官を静かに保ち、月がラーフの捕われから脱した
ように捕われることのない人々 ーー そのような人々にこそ 適当な時に
供物をささげよ。 
ーー バラモンが功徳を求めて祀りを行うのであるならば。
 
偽りもなく、慢心もなく、どんよくを離れ、わがものとして執することなく、
欲望をもたぬ人々がいる。 ーー そのような人々にこそ 適当な時に
供物をささげよ。 
ーー バラモンが功徳を求めて祀りを行うのであるならば。
 
あらゆることがらに関して平静であり、こころを落ち着け、全世界の内で
何ものをも そこなう事なく、流れをわたり、濁りなく、情欲のたかまり増す
ことのない道の人、 ーー かれは ( 温和な人 ) である。
 
世間のうちにあって いかなる罪悪をもつくらず、一切の結び目・束縛を
捨て去り、いかなる事にも とらわれる事なく解脱している人、
ーー このような人は まさにその故に ( 竜 ) と呼ばれる。
 
この世で 一切の罪悪を離れ、地獄の責め苦を超えて 努め励む者、
精励する賢者、 
ーー そのような人が ( 勤め励む者 ) と呼ばれるのである。
 
すでに この世において自己の苦しみの滅びたことを知り、重荷をおろし、
とらわれのない人、 ーー かれを わたくしは ( バラモン ) と呼ぶ。
 
敵意ある者どもの間にあって敵意無なく、暴力を用いる者どもの間に
あって心おだやかに、執著する者どもの間にあって 執著しない人、
ーー かれを わたくしは ( バラモン ) と呼ぶ。
 
曇りのない月のように、清く、澄み、濁りがなく、歓楽の生活の尽きた人、
ーー かれを わたくしは ( バラモン ) と呼ぶ。