ブッダの言葉 ( スッタ・ニパータ ) 8

                              ブッダの言葉 ( スッタ・ニパータ ) 8 
 
 
 
執著によって生存が起こる。 生存せる者は苦しみを受ける。
生まれた者は死ぬ。 これが苦しみの起こる原因である。
 
それ故に 諸々の賢者は、執著が消滅するが故に、正しく知って、
生まれの消滅したことを熟知して、再び迷いの生存にもどる事がない。
 
凡夫は欲望と むさぼりとに執著しているが、まなこある人は それを
捨てて道を歩め。 この世の地獄を超えよ。
 
生存に対する妄執を断ち、心の静まった修行者は、生をくり返す輪廻を
超える。 かれは もはや生存を受けることがない。
 
物質的領域に生まれる諸々の生存者と 非物質的領域に住む諸々の
生存者とは、消滅を知らないので、再びこの世の生存に戻ってくる。
 
しかし 物質的領域を熟知し、非物質的領域に安住し、消滅において
解脱する人々は、死を捨て去ったのである。
 
かれらは欲望を貪り、熱中し、溺れて、吝嗇(けち)で、不正になずんで
いるが、死時には苦しみに おそわれて悲嘆する、。
ーー 「 ここで死んでから、われらは どうなるのだろうか  」  と。
 
だから 人はここにおいて学ぶべきである。 世間で 「 不正 」 であると
知られている どんな事であろうとも、それの為に不正を行っては
ならない。 「 ひとの命は短いものだ 」 と賢者たちは説いているのだ。
 
想いを知りつくして、激流を渡れ。 聖者は、所有したいという執著に
汚されることなく、煩悩の矢を抜き去って、つとめ励んで行い、この世
をも かの世をも望まない。
 
欲に引かれ、好みにとらわれている人は、どうして自分の偏見を超える
ことができるだろうか。 かれは、自ら完全であると思いなしている。
かれは 知るにまかせて語るであろう。
 
真のバラモンは、煩悩の範囲をのり超えている。 かれが 何ものかを
知り あるいは見ても、執著することがない。 かれは欲を貪ることなく、
また離欲を貪る事もない。 かれは、この世では これが最上のもので
ある。 と 固執することもない。
 
かれは この世において、見たこと、学んだこと、あるいは思索した事に
関して、微塵ほどの妄想をも かまえていない。 いかなる偏見をも
執することのない そのバラモンを、この世において どうして妄想分別
させることができるであろうか ?
 
かれらは、妄想分別をなすことなく、いずれか一つの偏見を特に
重んずるということもない。 かれらは、諸々の教義のいずれかをも
受け入れることもない。 バラモンは戒律や道徳によって導かれる
こともない。 このような人は、彼岸に達して、もはや帰ってこない。
 
遠ざかり退いて行ずる修行者は、独り離れた座所に親しみ近づく。
迷いの生存の領域の内に自己を現わさないのが、かれにふさわしい
ことであるといわれる。
 
諸々の欲望を顧慮することのない人、 ーー 彼こそ 平安なる者である。
と わたくしは説く。 かれには結び目は存在しない。 
かれは すでに執著を渡り終えた。
 
かれは世間において、わがものという所有がない。 又、無所有を嘆く
こともない。 かれは欲望に促されて、諸々の事物におもむく事もない。
かれは 実に ( 平安なる者 ) と呼ばれる。
 
真のバラモンは、他人に導かれるということがない。 また諸々の事柄
について 断定して固執する事もない。 それ故に、諸々の論争を超越
している。 他の教えを最も優れたものだと見なす事もないからである。
 
過去の汚れを捨てて、新しい汚れを作ることなく、欲におもむかず、
執著して論ずる事もない。 賢者は諸々の偏見を離脱して、世の中に
汚されることなく、自分を責めることもない。
 
海洋の奥深い所では波が起らないで、静止しているように、静止して
不動であれ。 修行者は何ものについても 欲念をもり上らせては
ならない。
 
聖者は誠実であれ。 傲慢でなく、いつわりなく、悪口を言わず、
怒ることなく、よこしまな 貪り(むさぼり)と ものおしみとを超えよ。
 
世間における諸々の欲望を超え、また克服しがたい執著を超えた人は、
流されず、束縛されず、悲しむことなく、思いこがれる事もない。
 
動揺して煩悩に悩まされることなく、叡智ある人にとっては、いかなる
作為も存在しない。 かれは あくせくした営みから離れて、至る所に
安穏を見る。
 
つねに よく気をつけ、自我に固執する見解をうち破って、世界を空なり
と観ぜよ。 そうすれば 死を乗り超えることができるであろう。
このように世界を観ずる人を、死の王は見ることがない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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