ブッダの受難

                
                                                               
                                                          ブッダの受難
 
 
 
今を去る2500年前、現在のインド地方は、戦国時代であり、又、「 快楽を追及する
 
のも 人生の目的である。」、という伝統的快楽主義があった。 人々は、いつか必ず
 
ブッダと呼ばれる聖者が この世に現れるという希望をもっていたのである。
 
そんな中、ゴータマ ( ブッダの姓 ) というまだ若い修行者が悟りを開き、全く新しい
 
教えを説き始めたのだった。
 
古代階級社会では、諸々の差別が定着していた。 差別によって社会は構成されて
 
いたのだった。 しかしブッダは、あらゆる差別を全面否定したのである。
 
しかも、ブッダは 国王は武力によって税金を搾り取るから 盗賊と同じであるとまで
 
説いていた。 戦争による殺人を悪とし、極端な快楽主義を不浄であると宣言した。
 
侵略軍が通る道に、ただ一人で座り込んだ事も何度かあった。 先頭を行く将軍は
 
進軍を止め、国王が乗っている象軍の所まで馬に乗って走り、象に乗っている
 
国王に、「 ブッダが道に座っておられます。」、と報告した。 国王は象からおりて
 
ブッダのもとに行って礼拝し、「 あなたはいつも涼しい森で瞑想しておられるのに、
 
なぜこんな暑い所に座っておられるのですか ? 」、と聞いたところ、ブッダは、
 
「 親族の住む林はすずしい 」、とだけ返答した と仏典には伝えられている。 
 
国王はブッダの意を理解して、軍を引き上げさせたという。
 
多くの人々は、「 この世にブッダが現れた 」、と驚き その噂は広まっていった。
 
そして多くの国王や富豪から、賤民に至るまで、ブッダに帰依していき、国王や
 
富豪が次々と精舎を寄進していった。
 
 
そうなると面白くないのは、悪人や既存の宗教団体や、弟子を取られた思想家達
 
である。 なぜ ブッダだけに人望が集まるのか、という怨嗟に、ついにブッダ
 
殺してしまおうという事になった。
 
ブッダとその弟子達が托鉢のために入城した時、凶象をけしかけてブッダのもとに
 
走らせた悪人がいた。 しかし凶象は ブッダの前まで来た瞬間、おとなしくなったと
 
仏典には記録されている。
 
又、ブッダの通る道に、上から大岩を落とされた事もあった。 この時、岩はブッダ
 
の足を傷つけたのだった。
 
富豪ミガーラに招待されて、法を説いた時には、ジャイナ教の人間たちに、「 汝が
 
ブッダの教えを聞くというのなら、カーテンをひいて聞くが良い 」、と言って家をとり
 
まいた。 
 
当代一の忍者は、ブッダと神通力の勝負をしてあっさり負け、そのままブッダ
 
弟子になった。
 
ついに、殺し屋を頼んでブッダを殺害しようという計画が出たのだった。 そして
 
それを実行したのである。
 
しかし、調べさせてみると殺し屋はブッダの弟子になって修行しているという事が
 
わかった。 
 
そうなると、殺し屋一人で行かせてもだめだろうと思った悪人は、ある夜、
 
六人の凶悪な殺し屋をやとい、二人一組でブッダを殺害しに行かせたのである。
 
だが、いくら待っても殺し屋二人は帰って来ない。
 
「 又失敗したか ! 」、とがっかりした悪人は、次の二人に、「 お前たちは必ず殺す
 
のだ ! 」、と命令して、二人を殺しに行かせたのだった。
 
しかし又しても期待していた二人の殺し屋は、待っても待っても帰って来ない。
 
「 又、弟子にされたのか ・・・ 」、という事で、頭にきて 最後の殺し屋二人に
 
「 失敗したら、どうなるかわかっているだろうな。」。 と脅迫し、ブッダを殺しに
 
行かせた。 この時、殺し屋が通る道に ブッダが座っていて、「 やあ、よく来たね 」
 
と声をかけられたという。 結局この時の暗殺計画は いつものように失敗に終わり、
 
六人の殺害を請け負った男たちは ブッダの弟子として楽しく修行に励んだという。
 
 
当時、ブッダは ( 何ものをも恐れない人 )、と人々から賞讃されていた。
 
 
ブッダの言葉、( 修行者達よ、わたしは世間と争わず。されど世間が私と争う )

 

 
                                             ーー これらは、原始仏典に残る史実である。
 
 
 
 
 
 
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